職員の倫理・行動基準

ひびき福祉会

(はじめに)

この倫理・行動基準はひびき福祉会に従事する職員として、利用者の基本的人権を尊重し、利用者主体の事業を推進する専門家としての自覚を持つために定めます。
この倫理・行動基準は基本的姿勢であり、絶えず自己点検・相互点検する中で、自己変革に努めなければなりません。

基本的理念について

  1. 利用者を一人の人間として尊重し、働く権利と地域で生活する権利を守る担い手となります。
  2. 障害のある人達の権利を守る担い手として、障害者運動、事業活動にも主体的に参加していきます。
  3. 障害のある人達の権利を守る担い手となる為に、利用者とともに成長するという姿勢を持ち、日々自己変革に努めます。
  4. ひびき福祉会という組織の一員として、個人の責任を果たし、利用者・家族・職員から信頼される職員となります。
  5. ひびき福祉会の職員は事業の発展と、利用者の豊かな生活を保障するために、新しい事業・実践の創造に努めます。

職員の態度について

  1. 自分の健康については自己管理を行い、体調を整えて仕事に臨みます。
  2. 利用者に笑顔で接し、あいさつをきちんとします。
  3. 利用者が安全で快適に作業所生活がおくれるよう施設を清潔にし、整理整頓をします。
  4. 利用者の話をよく聞き、あるいは、身振りや態度から要求やその日の状態を把握し適切な対応をします。
  5. 利用者が事故や怪我をおこさないように、環境を整えるとともに、目配り・気配りを怠らない様にします。
  6. 同年代の市民と同じ権利をもつ主権者として接するとともに、利用者にもこうした行動を求めていきます。
    • 利用者のプライバシーを守ります。
    • 職員の気分で対応を変えたり、利用者を好き嫌いで判断したり、侮辱するような態度をとらず、平等で利用者の目線に立った対応を心がけます。
    • 利用者に対する体罰はどんな理由があってもおこないません。
    • 威圧的な態度、言葉遣いはしません。
    • 呼び捨ての廃止、年齢に応じた適切な呼称を使用します。
    • 同性介助を基本とします。
    • 職員の都合で、利用者の必要とする介助を遅らせません。

利用者との問題解決の方法

  1. 職員は、事故等が発生し緊急を要する場合は、現場の判断で適切な対応を早急に行います。この、初動の善し悪しが事態の進展に決定的な影響をあたえます。
  2. 問題がおきた場合は速やかにかつ正確に施設長・主任に報告し、職員が連携し、組織として事態に対応する。問題を曖昧にしたりごまかす行動は、問題を複雑にしたり、職員同士の信頼関係をも失墜させることを肝に銘じます。
  3. 職員は問題解決に対する力量を身につけ実行します。
    • 緊急時に対応できる予備知識と技術(救急医療・パニック・てんかん発作・脳性麻痺の利用者の緊張等)
    • 問題になっていることの核心を見極め、問題解決の見通しを明らかにする分析力をもちます。
  4. 問題解決の方法については合意を得るために、相手(利用者・家族)とよく協議し、合意したことについて職員は責任をもちます。
  5. 職員に非がある場合は率直に謝罪し、改善にむけての努力を行います。

作業場面での姿勢

<作業での目標>

  1. 利用者が働くことや人とのつながりを通して自己実現していけるようにします。
  2. 利用者がやりがいをもって意欲的に作業できるようにします。
  3. 利用者に高い賃金を保障します。

<そのために>

  1. 今の作業が意欲的にとりくまれているか絶えず問い続ける姿勢をもちます。
  2. 利用者の力を最大限に発揮できる作業を開拓していきます。
  3. できない作業でもできるようになる創意工夫(冶工具の開発等)を常に考えていきます。
  4. 自主製品における専門的技術の向上をめざしていきます。
  5. より高い給料保障をしていける作業の開拓を行っていきます。
  6. 生産量のアップを常に考えていきます。
  7. 利用者が作業しやすい作業環境を整えていきます。
  8. 社会の動きや情報を積極的につかむ努力をします。
  9. 納期を守り、業者・顧客からの信頼を得ていきます。
  10. 作業集団全体を把握し、的確な援助ができるようにしていきます。
  11. 働いている場面に職員がいない、作業援助とは別のことをしていることがないようにします。(作業場面から離れる時は他の職員に確認してから離れる。)
  12. 職員同士で、作業とは関係のない話をすることのないようにします。(話のできない利用者の多い班は特に注意する。)
  13. 作業の品物は大切に扱います。
  14. 部材・完成品は整理・整頓し管理していきます。

職員の倫理・行動規準

利用者の不安定時の態度について

  1. 威圧的態度で事を治めようとしてはなりません。
  2. 落ち着きのある態度で、相手と向き合い、時には毅然と、時にはやわらかく場面に応じた、相手の心に届く対応をしていきます。
  3. 不安要因がはっきりしている場合、速やかに取り除く(あるいは遠ざける)などして、安心できる条件を整えます。
  4. 激しいパニック(自傷・他傷行為)の場合は、まず危険を回避出来る様にします。
    • 周りにいる人、物を遠ざける配慮が必要であります。またとっさの場合でも職員が盾になれるよう日頃から周りとの位置関係に気を配る様にします。
  5. 不安定さもまた利用者の声として正面から受け止める姿勢をもちます。

<予防として>

  1. 日頃から、利用者一人ひとりにとっての不安定要因をしっかり把握し、不安に陥らせない配慮をしておくことを心がけます。
  2. 職員の連携がスムーズにできるように日頃から利用者に対する共通の理解をもつようにします。
  3. 不安定を一緒に乗り越えられるキーパーソンとなれるように信頼関係づくりに努めます。
  4. 家庭との連携を大切にし、常に体調を把握できるようにします。

外部(家族・団体・地域)との接し方

<基本姿勢>

ひびき福祉会の基本理念を踏まえ、社会人(ひびきの顔)として自覚を持った言動と行動に責任を持ちます。相手に敬意をもって接し、家族・団体・地域と連帯し相互に信頼できる関係を築いていきます。

<家族との接し方>

  1. 家族と利用者のことについて話す場合は、障害のある人を育ててこられた親や家族の立場を理解し、利用者の人権保障を共に進めるものとして、家族との合意を探っていきます。
  2. 家族としっかりコミュニケーションをとり信頼関係を築く様に心がけ、要望や指摘については真摯に受け止め、改善点等検討結果を速やかに報告します。
  3. 家族との関係で、次のことはしてはなりません。
    • お中元やお歳暮の商品(商品券)など個人的な金品の授受。

<地域・他団体>

  1. 地域や団体と接するときは「ひびきの顔」としての自覚を持ち、地域との共存を常に念頭におき、福祉会の事業や利用者のことを理解して戴くように心がけます。
  2. 地域、団体から依頼された役割を担う場合は、所属の施設長の判断を仰ぎます。

ショートステイの業務姿勢

<目標>

  1. 利用者が安全に、快適にすごせるようにしていきます。
  2. 緊急な申し出にも、最大限の努力をします。

<そのためには>

  1. 利用者が安心・落ち着ける環境づくりにつとめます。(同泊の人との相性、部屋の固定など)
  2. 設備等も含めて、安全、衛生保存につとめます。(不安定多数利用、はだし歩行、不潔の理解が困難な方もいます)
  3. 利用者の介護・援助に関する情報収集に努め、その人に関わる支援者に提供し、共有していきます。
  4. 介護・援助がスムーズに従事できるよう、支援者と来場時にその日の流れを確認しあいます。
  5. 支援者がその場を離れる場合は必ず顔を合わせて確認しあいます。
  6. 日課を記録し、利用者、家族に提示するとともに、今後の介護・援助の情報と いきます。その際には、プライバシーの保護は守ります。
  7. 利用者のニーズには最大限応えながら、やむ得ない場合は、他の短期入所事業等との連携もはかります。

グループホームの業務姿勢

  1. 利用者が安全かつ健康で充実した生活が送れるようにします。
  2. 利用者の意見・要望が尊重され、プライベートな時間、空間が保障されるようにします。
  3. 利用者が自立(自己表現できる場)できるようにしていきます。

<そのためには>

  1. 利用者の生活が快適か、リラックスできているか、絶えず問い続ける姿勢をもちます。
  2. 支援者は利用者の年齢に沿った言葉かけ、口調に心がけ、支援者個人の価値観を押し付けることなく、利用者の意思を反映できる生活になるようつとめます。
  3. 利用者一人ひとりのあらゆる力を引き出し、自分なりの生活に実感が持てるよう配慮していきます。
  4. 支援者は利用者の身体状況、精神状況、生活リズム等は把握しておき、些細なことでも、何か問題を感じたら、日中の職員・家族・グループホーム担当職員と相談するなど適宜対応します。
  5. 利用者が健康の不満が訴えられない場合や、特に発作がある方には、対応マニュアルを作り、共有できるようにする。利用者によっては訪問看護師や主治医との連携ができるようにしていきます。
  6. 利用者の声を優先するとともに、家族や関係者の意見、苦情には誠意を持って対応していきます。
  7. 支援者が複数のため、日誌や伝達事項は丁寧に記入、また、必ず目を通します。
  8. 地域への関わりは大切にし、挨拶は勿論、自治会活動には参加していきます。
  9. 集団生活で、特に感染予防には配慮し、衛生的な分野の学習も行います。
  10. 利用者が地域で自立していくためにも、支援者は社会・地域にも働きかけていきます。

相談業務にあたっての姿勢

  1. 相談業務を行うにあたって、相談者の自己実現、家族、集団、地域社会の発展を目指します。(誰もが住みやよい地域社会を目指します。)
  2. 社会福祉の発展を阻害する社会的条件や困難を解決するため、その知識や技術を駆使します。(相談を受ける際には、誠心誠意を持って解決にあたります。また、社会資源の創造など社会に対しても貢献します。)

<そのためには>

  1. 相談者から事情を聴取する場合、業務遂行上必要な範囲にとどめ、プライバシー保護は必ず守ります。もし、個人情報提供が相談者の公共利益のため必要な場合は、本人の承認を得なければなりません。
  2. 相談者一人ひとりに同等の熱意をもってサービスや支援を提供します。
  3. 常に相談者と社会の新しいニーズを敏感に察知していきます。
  4. 相談者のニーズ把握、課題分析を行い、必要なサービス・支援を提供、提示していきます。
  5. 相談職に就くものは、個人・家族・集団・地域社会の文化的な差異や多様性を尊重します。
  6. ニーズ把握、課題分析の中から、地域社会へ働きかけ、社会資源の開拓に努めます。
  7. 日頃から地域での情報収集に努め、福祉、行政、保険、医療等関係諸機関とのネットワーク作りに積極的に参加していきます。

<おわりに>

この倫理・行動基準は2001年4月1日に制定、2007年4月1日に改定したものです。私たち更に障害にある人達の基本的人権の保障をめざしてするものです。

ひびき福祉会基本理念の意味を理解するために

~5つの基本的精神の説明と福祉会の果たす役割~

  1. 「創造」とは、新しいものを初めて作り出すということです。それまで無かったものを初めて作り出すということです。
    ひびきの理念に置き換えると「障害者のニーズや願いに応えた事業の創設」「創造的な仕事」「創造性に富む製品作り」などと解釈することが出来ます。
    ひびきや共同作業所運動の歴史の中で、制度にない無認可作業所づくりから始まり、制度化に向けた30年の運動がありました。
    東大阪市で認可施設を始めて開設、大型スーパー(ジャスコ)内に初めて分場施設を認めさせるなど先駆的な事業展開を行ってきました。
    また、新しい授産(木工、ウエス、生ケーキづくりなど)にもチャレンジし開拓をしてきました。
    これからも厳しい動向の中で、就労支援や継続支援など創造的な事業展開がますます求められてくるでしょう。
    あらためて福祉会として「事業の創造」に向けて努力することと、未開の分野を切り開く「創始者」として役割を果たしていきましょう。
  2. 「安全」とは、危害または損傷・損害を受けるおそれのないという意味です。危険が無く安心なことをあらわし、ひびきの利用者にとっては、ひびきが「安全な場所」であり「生命・財産などの安全が保障」されるために努力する決意をするものです。
    親亡き後の生活保障もこの精神が含まれます。「安全」の語源は、中世時代には「あん せん」といわれ「幸福な社会づくり」という意味もあったようです。
    この精神を大切にした事業や実践を発展させていきましょう。
  3. 「感謝」とは、ありがたいという気持ちを表すという意味です。
    私たちの事業は、多くの人たちに支えられていることを、福祉会として決して忘れてはいけません。
    そのことを倫理行動基準にも宣言し、外部の方への明るい挨拶や電話の対応など常に謝意をもった態度や行動につなげていきましょう。
  4. 「正義」とは、人の道にかなっていて正しいことです。正しい道義という意味もあります。
    また、他者や人々の権利を尊重することで各人に権利義務・報奨さらに制裁などを正当に割り当てるという意味(公正・公平)も含まれているとても深い精神のある言葉です。
    アリストテレス(ギリシャの哲学者)が定義した意味には「各人のその価値に応じた配分を受け、基本的人権を中心とした諸権利を保障されるべし」という社会的正義を要求する思想として意味づけられていました。
    障害がある人たちの基本的人権が保障されることを私たちも目指しているわけですが、そのことを阻害する動向には毅然と戦い、権利保障などを公平に分配される仕組みづくりに果敢に取り組んでいきましょう。
  5. 「連帯」とは二人以上の者が共同してある行為または結集に対して責任を負うという意味です。
    地域で「障害のある利用者の人達が普通に暮らせる」ことを共通の目的に、さまざまな分野、他職種の機関、障害者団体が連携、連帯していくことが非常に重要になっています。
    とりわけ障害者自立支援法に関わって、これまでにない連帯した運動や取り組みができていることが歴史的に新たな障害者運動の一ページを作りました。
    私たち福祉会もその一翼を担っていきましょう。

以上5つの基本的精神について、福祉会すべての構成員(利用者、家族、職員、法人役員すべて含む)が理解をし、行動することで福祉会事業をさらに発展させていきたいと思います。
具体的には利用者の権利、倫理行動基準に示し宣言をしていきます。
構成員一人一人がこの基本的理念をさらに発展できるように努力していきましょう。

2007年9月